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目次
監査実施論総論
監査の実施の具体例
- 現金:実在性を確かめる「実査」
- 預金:実在性を確かめる通帳の「実査」、「確認」
- 売掛金:「確認」、貸倒引当金の「妥当性」
- 棚卸資産:「立会」
監査基準の改訂
- 平成17年改訂:
- 経営者の提示する財務諸表項目:経営者の責任
- 監査要点:監査人が設定した立証すべき目標
財務諸表監査の業務プロセス
- 財務諸表の適正性を直接立証はできない
- そのため、監査人が直接立証可能なレベルまで展開し、監査要点を設定
- 設定した監査要点に対して、リスク・アプローチを適用し、監査手続を実施し十分かつ適切な監査証拠を収集(個別的評価)
- 合理的な結論を累積するだけでなく、統合化(総合的評価)
- 監査意見を形成するに足る基礎を形成
アサーション
- アサーションとは:全ての財務諸表項目が、実在性や網羅性等の一定の要件を充足していると経営者が主張していること
- アサーションの具体例(損益計算書項目):発生、網羅性、正確性、期間帰属、分類の妥当性、表示及び注記
- アサーションの具体例(貸借対照表項目):実在性、権利と義務、網羅性、評価と期間配分、分類の妥当性、表示及び注記
- 評価の妥当性のイメージ:売掛金→貸倒引当金、有価証券→期末評価、棚卸資産→低価評価、有形固定資産→減損処理、繰延税金資産→回収可能性
- 監査要点とアサーションの関係:監査人は、アサーションを監査要点として利用する
監査要点
- 立証すべき目標
- 資産の場合:実在性、評価の妥当性(収益の場合は発生)
- 抽出対象:財務諸表計上項目
- 証憑突合の種類:遡及法
- 負債及び費用の場合:網羅性
- 抽出対象:証憑書類等から
- 証憑突合の種類:前進法
監査証拠
- 監査証拠とは:監査人が意見表明の基礎となる個々の結論を導くために利用する情報
- 監査証拠の種類
- アサーションを裏付ける情報
- アサーションと矛盾する情報:矛盾しない場合はより確かな心証が得られる
- 情報がないこと自体
- 監査証拠の構成要素
- 会計記録:取引や会計事象の記録(帳簿や証憑書類)+その裏付けとなる記録(通帳など)
- その他の情報:例えば、ヒアリング
- 監査証拠の分類
- 機能別分類:直接立証可能証拠、間接立証可能証拠
- 形態別分類:物理的証拠、文書的証拠、口頭的証拠
- 入手源泉別分類:内部証拠、外部証拠
- 監査証拠として利用する情報の適合性と信頼性
- 適合性:手続の目的によって影響を受ける
- 信頼性:情報源(経営者の利用する専門家の業務により作成されている情報の利用、企業が作成した情報を利用する場合)、情報の種類、情報を入手する状況に影響を受ける(重要な例外が存在)
十分かつ適切な監査証拠
- 十分かつ適切な監査証拠とは
- 1.監査要点に適合(情報の適合性)
- 2.証明力を有する(情報の信頼性)
- 3.過不足ない
- 監査証拠の十分性:量的尺度(監査証拠の質にも影響をうける)
- 監査証拠の適切性:質的尺度
監査の手法
- 監査証拠の入手と検討は、運用評価手続をすることで「内部統制からの逸脱を示す状況」、実証手続を実施することで「アサーションと矛盾する状況」を識別することができる。
- 記録や文書の閲覧:実在性を立証
- 有形資産の実査:実在性を立証(換金性の高い資産については、相互融通が行われないようにする必要あり)
- 観察:例えば、棚卸資産の実地棚卸状況の立会
- 確認:第三者から入手
- 再計算
- 再実施
- 分析的手続:財務データ相互間のデータの関係の分析・検討、財務データ以外のデータと財務データとの間の関係の分析・検討
- 質問:十分な監査証拠を入手できない、他の監査手続と併用する必要あり、経営者確認書
監査手続の実施対象となる項目の抽出
- 精査:100%
- 試査(現行、原則として):100%未満
- 特定項目の抽出による試査
- 監査サンプリングによる試査
- 試査が採用されている理由
- 1.財務諸表監査は合理的な保証を得ることを目的としている(積極的理由)
- 2.内部統制が十分に整備・運用されている場合は、母集団の同質性が確保されている可能性が高い(積極的理由)
- 3.数学的確率論(統計学)を援用(積極的理由)
- 4.被監査会社及び監査人の経済的負担を軽減(消極的理由)
抽出方法 | リスク | 推定 |
---|---|---|
精査 | ノンサンプリングリスク | 推定不要 |
特定項目の中酒tによる試査 | ノンサンプリングリスク | 推定不可 |
監査サンプリングによる試査 | サンプリングリスク、ノンサンプリングリスク | 推定する |
監査証拠の矛盾又は証明力に関する疑義
- 監査手続の変更、追加の判断
- 監査の他の側面への影響を考慮
確認
総論
- 意義:紙媒体、電子媒体又はその他の媒体により、第三者から文書による回答を直接入手する監査手続
- 積極的確認:すべての場合において、直接回答を求める
- 証明力:強い。確認回答者が情報の正確性を検討せずに回答するリスクは常に存在。
- ブランクの確認依頼:確認依頼に金額(又は情報)を記載せず、確認回答者に金額の記入や他の情報の提供を依頼する積極的確認。回答の正確性は向上、回答率は低くなる。
- 消極的確認:同意しない場合のみ、直接回答を求める
- 証明力:積極的確認より弱い。4条件全てに該当しない限り、単独の実証手続として利用できない(他の実証手続と組み合わせて利用は可能)
- 回答の傾向:回答確認者にとって不利な場合→回答する、有利な場合→回答しない
- 証明力:一般的に、企業が内部的に作成した証拠よりも証明力が強い
確認手続
- 監査証拠の証明力は、立案内容によって直接影響を受ける
- 確認すべき情報:勘定残高に限られない
- 取引残高がゼロの銀行であったとしても原則、確認依頼を発送する
- 入手できる監査要点:実在性(回収可能性は必ずしも適合しない)
- 売掛金→実在性の確認→帳簿=遡及法
- 買掛金→網羅性の確認→仕入先リスト=前進法
- 確認依頼の送付に対する経営者の不同意:質問→評価→代替的な監査手続、合理性がない場合は監査役等に報告
- 売掛金に対する代替的な監査手続:期末日後の回収状況の検討
- 確認手続の結果
- 信頼性に疑義を抱く場合:追加の監査証拠を入手しなければならない
- 疑義が生じる理由:入手の妨害、改ざん、不正リスクは常に存在する(例:間接的に受け取った場合、電子的回答の場合)
- 口頭による回答:確認の定義には該当しない
- 信頼がないと判断した場合:評価する必要あり
- 積極的確認が未回答の場合:重要な虚偽表示リスクを示唆する可能性あり。再配送や追加配送をすることがある。最終的には代替的な監査手続を実施する必要がある。
- 確認差異の調査:虚偽表示又は虚偽表示の可能性を示唆、内部統制の不備を示唆。必ずしも虚偽表示を意味するとは限らない。確認差異を調査しなければならない。
分析的手続
総論
- 分析的手続とは:財務データ相互間又は財務データと非財務データとの間に存在すると推定される関係を分析・検討し、財務情報を評価する
- 必要な追加的調査も含まれる
- 前提:反証がない限り、データ間の関係が存在し継続する
- 具体例
- 監査計画段階(リスク評価手続):必ず実施しなければならない
- 監査実施段階(分析的実証手続):実施することができる
- 監査意見表明段階:必ず実施しなければならない
分析的実証手続の手順
- 特定の分析的実証手続が適切か否かの判断(複雑さ、証明力、詳細テストの併用)
- データの信頼性の評価(情報源、比較可能性、性質及び目的整合性、内部統制)
- 推定が十分に高い精度であるかどうかを監査人が評価するに当たって考慮する事項(正確性、細分化、利用可能性)
- 計上された金額と推定値との許容可能な差異の決定(重要性の基準値によって変動)
その他の論点
- 分析的手続の結果の調査:矛盾又は乖離の理由を調査
- 1.経営者への質問、合理性を裏付ける監査証拠の入手(必ず行う)
- 2.他の監査手続(必要な場合)
- 分析的実証手続がより効果的かつ効率的な手続きとなる監査要点:取引量が多く、かつ、予測可能な取引。網羅性の検証に効果的。
- 全般的な結論を形成するための分析的手続:監査意見表明段階での分析的手続
リスク・アプローチと監査リスク
リスク・アプローチに基づく監査とは
- 重要な虚偽の表示が生じる可能性が高い事項について重点的に監査の人員や時間を充てることにより、監査を効果的かつ効率的なものとする
- 各リスクの評価が大事であり、経営者等とのディスカッションが有効
リスク・アプローチの概要
- 監査リスクとは:監査人が、財務諸表の重要な虚偽表示を看過して誤った意見を形成する可能性
- 監査リスクがない場合:重要な虚偽表示がない場合に、監査人が重要な虚偽表示があるという意見を表明するリスク。訴訟、風評等
- 監査リスクの決定:所与
- 監査人は、監査リスクを許容可能な低い水準に抑える(=所与)
- 監査リスクの構成要素:監査リスク=重要な虚偽表示リスク×発見リスク
- 重要な虚偽表示リスク=固有リスク×統制リスク
- 重要な虚偽表示リスク:誤謬または不正による、企業側のリスク。評価することはできるが、直接変動させることはできない
- 固有リスク:関連する内部統制が存在していないとの仮定
- 統制リスク:企業の内部統制によって防止又は発見・是正されないリスク
- 固有の限界:統制リスクは常に存在する
- 発見リスク:監査手続を実施してもなお発見できないリスク
- 固有の原価が存在するので、零にはできない
- 発見リスクと重要な虚偽表示リスクの関係
- 内部統制が有効な場合:重要な虚偽表示リスクは低い→発見リスクは高くてよい→実証手続は簡略的でよい→効率的
- 内部統制が脆弱な場合:重要な虚偽表示リスクは高い→発見リスクは低い必要あり→実証手続は重点的にする必要あり→効果的
- 監査人の対応:監査手続の有効性を高める(実証手続の種類、実施時期、範囲)
- 重要な虚偽表示リスクの評価と発見リスクの決定は、監査人の職業的専門家としての判断に基づく
十分かつ適切な監査手続を入手するための監査手続
- リスク評価手続:内部統制を含む。あくまでも暫定的に評価するために実施する。これだけでは十分かつ適切な監査証拠を入手することはできない。
- 全般的な対応
- リスク対応手続:運用評価手続、実証手続で構成
- 運用評価手続
- 実証手続
監査の計画及び実施における重要性
重要用語の定義
- 重要性の基準値:財務諸表全体に置いて重要であると判断する虚偽表示の金額
- 特定の取引種類、勘定残高又は注記事項に対する重要性の基準値:重要性の基準値を下回る場合であっても、財務諸表の利用者が財務所要に基づいて行う経済的意思決定に影響を与えると合理的に見込まれる特定の取引種類、勘定残高又は注記事項がある場合に適用する重要性の基準値。重要性の基準値より小さい金額が設定される。(例:製薬会社の研究開発費)
- 手続実施上の重要性:ここの監査要点レベルでの話。重要性の基準値より低い金額が設定される。
重要性の判断基準
- 個別又は集計すると経済的意思決定に影響を与える
- 金額(金額的影響)又は内容(質的影響)
- 一般的な財務諸表の利用者のニーズを勘案
重要性の基準値
- 質的に重要な虚偽表示を全て発見しようとしなくてよい
- 金額的影響を考慮して、重要性の基準値を決定
- 決定手順:最初に指標が選択され、その指標に対し、特定の割合を適用する
- 指標の例:税引前利益、過年度や期中の実績、当年度の予算
監査の進捗に伴う改訂
- 重要性の基準値を改訂すべき情報を認識した場合、重要性の基準値を改訂しなければならない
今日やったこと
- 監査論(監査実施論の総論、確認、分析的手続、リスク・アプローチ、重要性の基準)
- 財務会計論の答案練習
明日やること
- 監査論の続き
- 財務会計論(計算)の連結会計の復習
- 企業法の復習