租税法

消費税法まとめ

消費税額の算定をおおまかなイメージ

  1. 自社の行ったキャッシュインフローを伴う取引額のうち、消費税がかかる取引額を求める
  2. ①を基準に取引相手から預かった消費税額を計算する
  3. 自分の行ったキャッシュアウトフローを伴う取引額のうち、消費税を支払った取引額を求める
  4. ③のうち、a.「自分が消費したもの」と、b.「自分が付加価値をつけて外部に販売・売却したもの」に分別する
  5. ④のうち、b.「自分が付加価値をつけて外部に販売・売却したもの」に支払った消費税額を計算する
  6. ②で計算した「取引相手から預かった消費税額」から、⑤で計算した「自分が付加価値をつけて外部に販売・売却したものに支払った消費税額」を控除する
  7. ⑥で求めたのが、納付すべき消費税額

公認会計士試験において、消費税法をどのように解くか

概要

  • 「これは消費税がかかるものか」「これは自分が消費したものか」「これは自分が付加価値をつけて販売したものか」などを一つ一つの項目で判定する必要があるが、すべてを正しく振り分けないと正答にならない問題が多い
  • だから、これらの判定基準を全て覚えるのはコスパが悪い
  • 部分点を狙える問題を覚えて、それに特化するのが得策
    • 租税法は圧倒的に時間が足りないので、消費税法には時間を使わず法人税法などに時間を回した方がよい戦略になる
    • 部分点を狙うべき論点は、求めるのに時間がかからず他の論点と完全に独立している問題である

具体的にどの論点に手をつけるべきか

  1. 中間納付税額:出たら10秒で求まる
  2. リバースチャージの額
  3. 返還対価等に係る消費税額:売上返品、売上値引、売上割戻、売上割引、販売奨励金(課税売上げのみ)
  4. 貸倒れに係る消費税額:売上債権に係るもののみ(貸付金に係るものは対象外課税売上げのみ)
  5. 控除過大調整税額:償却債権取立益が発生した時(売上債権のみ)
  6. 資産の用途転用に伴う消費税額の調整棚卸資産以外税抜で100万円以上
  7. 居住用賃貸建物の売却棚卸資産も含む税抜で1,000万円以上
  8. 非課税資産の輸出等:明らかに分かりやすいし、拾ってくる項目も少ないので、部分点が狙える

最低限暗記した方が取引の分類

  • 不課税のやつ
    • 剰余金の配当
    • 保険(事故ったときに貰うやつ)
  • 非課税のやつ
    • 利子(ありとあらゆる利子、償却原価も含む)
    • 土地の譲渡・貸付け
    • 有価証券の売却は非課税(5%が非課税売上高に)
    • 保険(定期的に払うやつ)

消費税総論

  • 間接税
  • 多段階累積控除
  • 消費税の税率
    • 令和元年(2019年)9月30日以前:8%(国税分6.3%、地方税分1.7%)
    • 令和元年(2019年)10月1日以後:10%(国税分7.8%、地方税分2.2%)

納付税額の算定手順

  1. 課税売上げ \times \frac{100}{110} \qquad (a)
  2. (a)の千円未満切捨て…(b)
  3. (b)×7.8%…(c)
  4. 課税仕入れ \times \frac{7.8}{110} (d)
  5. {(c)-(d)}を百円未満切捨て

取引の区分

  1. 4要件(国内において事業として対価を得て行うもので、資産の譲渡、貸付け及び役務の提供である
    • No:不課税取引
    • Yes:②へ進む
  2. 課税資産である
    • No:非課税取引
    • Yes:③へ進む
  3. 課税取引である
    • No:免税取引
    • Yes:課税取引

特殊な取引

みなし譲渡

  • 対価の額とされる金額
    • 棚卸資産:max[課税仕入れの金額、販売価額×50%]
    • 棚卸資産以外:時価

低額譲渡

  • 低額譲渡と判定される場合→棚卸資産かどうかを問わず時価を対価の額とする
  • 判定基準
    • 棚卸資産:max[課税仕入れの金額、販売価額×50%]>譲渡対価
    • 棚卸資産以外:販売価額×50%>譲渡対価

交換・下取り・現物出資

  • 交換取得する資産の取得時における時価が課税仕入れの額
    • 交換差金なし:課税売上げ=課税仕入れ
    • 交換差金あり:課税売上げ=課税仕入れ±交換差金
  • 下取り
    • 旧資産の譲渡=課税売上げ
    • 新資産の購入=課税仕入れ
  • 現物出資
    • 課税資産の譲渡=課税売上げ
    • 株式の取得=課税仕入れに該当しない

一括譲渡

  • 合理的に区分されている場合:問題文に従う
  • 合理的に区分されていない場合:時価で按分負債は無視

リバースチャージ方式

  • 課税標準の額に含める:課税標準=課税売上高×100/110+特定課税仕入れに係る支払対価
  • 課税売上割合の計算における課税売上高には含めない(課税売上割合の計算には影響を与えない)
  • 控除対象仕入額の計算対象(注意:7.8/100
  • 注意:リバースチャージは合算してから最終計算をする

仕入税額控除の解き方

  1. 全額控除の対象かどうか判定する(課税売上高・課税売上割合・課税標準を求める)→テンプレート使って計算(効率よく点がとれるので必ず解く
    • 判定基準:課税売上高5億円以下かつ課税売上割合が95%以上
  2. 課税仕入れと課税仕入れではないものを分類
  3. ①で全額控除の対象であった場合、課税仕入れ+引き取りに係る消費税額=仕入税額控除。対象外はステップ④へ
  4. 個別対応方式と一括比例配分方式をテンプレートを使って求める(時間かかるので試験では後回しが賢明)
  5. 個別対応方式の場合、課税資産の譲渡等にのみ要するものと、その他の資産の譲渡等にのみ要するものそれ以外に分類。その後按分計算。

納税義務の判定

  1. 基準期間の課税売上高(税抜)を算定(値引き等を控除後
  2. ①で求めた課税売上高が1,000万円以下
    • でない:免除されない
    • である:ステップ③へ
  3. 特定期間の課税売上高が1,000万円以下
    • である:免除
    • でない:ステップ④へ
  4. 特定期間中の給与等支払額が1,000万円以下
    • である:免除
    • でない:免税されない
  • 例外:設立当初2年は免税事業者
    • 資本金1,000万円以上は免除されない

控除対象仕入税額に対する調整

調整対象固定資産

  • 対象資産:棚卸資産でなくかつ100万円以上税抜
  • 転用から
    • 1年以内:全額
    • 2年以内:2/3
    • 3年以内:1/3

居住用賃貸建物

  • 対象資産:1,000万円以上(税抜)建物で、棚卸資産も含む
    • 住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物を除く(例:旅館・ホテル)
  • 3年たっても保有している場合:割合で控除対象仕入税額を按分計算
  • 3年たつ前に売った場合:割合で控除対象仕入税額を按分計算

簡易課税制度

  • 対象:基準期間課税売上高5,000万円以下
  • 仕入税額控除:課税標準額+貸倒回収に係る消費税額ー対価の返還等に係る消費税額×みなし仕入れ率
  • みなし仕入れ率
    • 第一種事業:90%
    • 第二種事業:80%
    • 第三種事業:70%
    • 第四種事業:60%
    • 第五種事業:50%
    • 第六種事業:40%