財務会計論(理論)

資本会計・リース取引  (2020年9月5日・財務会計論・理論)

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資本の分類(資本会計)

会計理論上の分類

  • 払込資本と留保利益に分類する
  • 分類基準:発生源泉別分類

会社法理論上の分類

  • 分配不能資本と分配可能資本に分類する
  • 分類基準:分配可能・分配不能分類→債権者保護

新株予約権(資本会計)

新株予約権の計上区分

  • 負債の部に計上すべき(従来の考え):
    • 理由:新株予約権は払込資本とはいえないので、仮勘定として負債の部に計上すべき。(仮受金みたいなイメージ)
    • 反論(現行):新株予約権は権利行使時は払込資本失効時は留保利益となる。いずれにしても、返還する必要はなく、経済的資源を引き渡す義務はないので、負債の定義に当てはまらない
  • 純資産の部の株主資本の区分に計上すべき(不適用):
    • 理由:権利行使時も失効時も、どちらも最終的には当該企業の保有者である株主に帰属するので、株主本の部に計上すべき。(最終的な帰属先を重視)
  • 純資産の部の株主資本以外の区分に計上すべき(現行):
    • 理由:新株予約権保持者は、株主とはなっていないので、現時点では株主に帰属しているとはいえない。(現時点の帰属先を重視)

自己新株予約権の会計処理

  • ポイント:損益取引である
  • B/S上の表示:
    • 原則:新株予約権から直接控除
    • 例外:新株予約権の控除項目として掲載
    • 理由:自己新株予約権は資産性があるが、資産の部に計上すると、両建てされてしまう

資本剰余金と利益準備金(資本会計)

資本剰余金と利益剰余金の混同禁止

  • 資本剰余金の利益剰余金への振替は原則として認められない
  • 背景:その他資本剰余金が分配可能になったことで、明記する必要がでてきた
  • 資本剰余金と利益剰余金の振替が認められる場合:利益剰余金が負の残高のとき。(年度決算時に限る・しなくても良い)

自己株式(資本会計)

自己株式の会計学的性格

  • 資産説(従来)
  • 資本控除説(現行)

自己株式の処分

  • 処分対価>帳簿価額:新株の発行と同様の経済的実態=払込資本資本剰余金として処理
  • 処分対価≦帳簿価額:株主資本からの分配の性格を有する
    • 払込資本の払戻しと同様の性格と捉える(現行)→資本剰余金
    • 利益配当と同様の性格と捉える(不適用)→利益剰余金の減少

その他資本剰余金を上回る自己株式処分差損の処理

  • その他利益剰余金に振り替える
    • 理由:残高が負の資本剰余金という概念は存在しないから
    • 資本剰余金と利益剰余金の混同には当たらない
  • 注意①:翌期に埋め合わせることはできない
  • 注意②:会計期間末に処理する
    • 理由:その都度補填すると、発生の順番によって結果が異なるから

自己株式の消却

  • 時期:消却手続きが完了したときに処理
  • 性格:株主資本からの分配の性格
    • 払込資本の払戻しと同様の性格と捉える(現行)→資本剰余金
    • 利益配当と同様の性格と捉える(不適用)→利益剰余金の減少

付随費用の扱い

  • 現行:損益取引、財務費用と捉える(株主との間の資本取引ではない)
  • 国際基準:広く捉えた資本取引である。
  • 株式交付と同じ論点

無償取得

  • 自己株式を時価で測定し、同額を利益とする(不適用)
    • 理由:①換金性がある②支払の免除と捉えられる③譲渡者の意図は会社の利益計上である
    • 反論:①そもそも自己株式は資本取引である支払の免除という事実はない③譲渡者の意図なんてどうでもよい
  • 自己株式の数のみ増加させる(現行)
    • 理由:株主間の富の移転である

B/S上の表示(資本会計)

資本の部から純資産の部への変遷

  • 現行:純資産=資産ー負債
  • 昔は、資産と負債の差額がそのまま資本となった
  • その他有価証券評価差額金の登場で、そうではなくなった

株主資本に属する項目を明確化する理由

  • 前提:財務諸表の最重要情報は利益情報
  • よって、利益を直接生み出す株主資本も重視される

新旧規定の具体的な変更点

  • 非支配株主持分:負債→株主資本以外の項目
  • 新株予約権:負債→株主資本以外の項目
  • 繰延ヘッジ損益:資産・負債→株主資本以外の項目
  • 採用されなかった表示方法
    • 純資産の部の名称を「株主持分の部
    • 純資産の部を「株主資本」と「その他純資産」に分ける
    • 小計を示す

株主資本等変動計画書(資本会計)

作成目的と背景

  • 目的:株主資本の各項目の変動自由を報告する
  • 背景:剰余金をいつでも決定できるようになったので、B/SとP/Lだけでは数値の連続性を把握するのが難しくなった。

表示

  • 純資産の部の表示との整合性:B/Sの純資産の部の表示区分に従う。前期及び当期の期末残高と整合する必要あり。
  • 株主資本の各項目:変動事由ごとに表示
  • 株主資本以外の各項目:
    • 原則:純額表示
    • 例外①:変動事由ごとに表示
    • 例外②:注記する
    • 理由:株主資本以外は株主資本に比べて有用性が低い(重要なのは投資の成果を表す利益の情報)。事務負担を軽減できる
    • 反論:評価・換算額等の残高が大きい場合、その変動が将来の株主資本の変動に大きな影響を与える可能性があり、その変動事由は財務諸表利用者によって有用である

会計主体論(資本会計)

会計主体論とは

  • 会計を行う判断主体は誰であるかに関する議論
  • 資本主理論」と「企業主体理論

資本主理論

  • 主体:資本主(株主)
  • 基本原理:資産ー負債=資本資本主の持分
  • 資本取引の範囲:株主からの拠出部分に限定
  • 貸借対照表の役割:資本を示すために存在

企業主体理論

  • 主体:企業それ自体
  • 基本原理:資産(資金の運用状況)=負債+資本(資金の調達源泉
  • 資本取引の範囲:企業活動の継続的維持を図るために拘束すべきものを含む
  • 貸借対照表の役割:企業がどのように資金を運用、調達しているかを示す

支払利息と支払配当金の扱い

  • 資本主理論支払配当金は剰余金の処分(現行の考え方)
  • 企業主体理論:支払配当金も支払利息も費用処理

会計主体論と資本剰余金の範囲

  • 会計理論上の資本剰余金:企業主体理論と密接に関係
  • 会社法理論上の資本剰余金:資本主理論と密接に関係

ファイナンス・リース(リース取引)

リース取引の分類

  1. ファイナンス・リース取引オペレーティング・リース取引:下記の2条件を両方満たせばファイナンス・リース取引
    • 条件①:解約不能の要件
    • 条件②:フルペイアウトの要件①現在価値基準90%以上経済的耐用年数基準75%以上いずれか
  2. 所有権移転外ファイナンス・リース取引と所有権移転ファイナンス・リース取引:下記の③条件のいずれかを満たせば所有権移転
    • 条件①:所有権移転条項付リース
    • 条件②:割安購入選択権条項付リース
    • 条件③:特別仕様のリース物件

ファイナンス・リース取引の捉え方

  • 経済的実質:
    • 資産の割賦購入取引(売買取引)と同様。「実質優先(主義)」といえる。
    • 借入による購入取引と同様。「ファイナンスとしての性格を有する
  • 比較可能性の観点:財務諸表上の比較可能性を確保する観点から、売買処理するべき

所有権移転外ファイナンス・リース取引と通常の売買取引の違い

  • 外部からの資金調達によりリース物件を取得した(ファイナンス)と捉えられる←移転ファイナンス・リースでも同じ
  • リース物件の利用期間と資金調達の期間が一致する

リース資産の資産性

  • 資産の定義から考える(過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源)
  • 1.過去の取引の事象である
  • 2.将来のキャッシュの獲得に貢献する経済的資源である
  • 3.リース物件から生み出されるキャッシュは自ら享受できる

その他の論点

  • 利息相当額の会計処理:原則としてリース期間にわたり利息法で処理
    • 例外①:利息相当額を計上せず、減価償却費のみ計上
    • 例外②:定額法で処理
  • 土地のリース:オペレーティング・リース取引に該当。

ファイナンス・リース取引の貸手側の処理(リース取引)

基本

  • 所有権移転ファイナンス・リース取引:リース債権
  • 所有権移転外ファイナンス・リース取引:リース投資資産
  • 貸倒引当金も設定する

今日やったこと

  • 財務会計論(理論)の資本会計の論点
  • 財務会計論(理論)のリースの論点

明日やること

  • 財務計算の復習(事業分離・ストックオプション)
  • 管理会計論の練習問題(単純総合原価計算の諸論点)